Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


ドバイエアショーをあるく 目玉となった米露機編

2022/01/28 航空機

ドバイエアショーは1989年に始まりました。戦前にスタートした欧州のエアショーに比べて歴史は浅いものの、見本市としてロンドン、パリ、シンガポールに加え世界4大エアショーの一角を占めるまでになりました。大規模な地上展示機の数もそうですが、本来の見本市として航空機の売買商談額が大きなことで存在感を示しています。

コロナ禍前2019年のパリエアショーでは、その額1,400億米ドル(15兆4千万円)に対し、2021年のドバイエアショーでは408機の航空機で総額780億米ドル(8兆5800億円)が取引きされました。この数字はコロナ禍においては立派なものです。

エアショー会場でひときわ目立つBoeing777XとIrkutMC-21-310

そのドバイエアショーについて複数回の記事にて詳しく解説していきましょう。
ドバイ国際空港から南に70㎞ほど離れた、ドバイ第二空港として機能のあるドバイ・ワールド・セントラル国際空港、別名アル・マクトゥーム国際空港が会場です。この場所は、現在開催中のエキスポ2020ドバイの会場からほど近く、エアショー期間はドバイメトロ「EXPO2020」駅からシャトルバスが運行されます。

写真:エミレーツ航空A380の上を優雅に飛ぶBoeing777X

展示館に向かう

広大な駐車場から会場に入るとまずは展示館が姿を現します。屋内展示は一か所のみ。この中に世界各地から20か国の展示を含む1,200社以上の展示ブースが設置されています。主にはメーカーの出展になりますが、このドバイでは、エミレーツ航空も大きなブースを構えていました。日本のメーカーはC-2を出展した川崎重工業とパナソニックアビオニクスでした。今回は、ビジネスジェット機の出展も多く、展示の中にはルフトハンザテクニークが新世代の機内装備を持つエアバスA350改造機を紹介していたのが目新しいと言えるでしょう。

展示で最大スペースを誇るのが、地元アブダビを拠点とする軍事テクノロジー企業の「EDGE」でした。同社は、エアショー期間中にボーイングやエンブラエルを含む16社との共同開発に調印し、存在感を示していました。

写真:Boeing777Xの急角度テイクオフ

シャレーとは

展示場を出ると、地上展示機が姿を現すのですが、この場所にシャレーと呼ばれる別棟の建物があります。地上展示機は160機以上もあり、横長に並べられていますが、それに沿うように建物が長屋のように並びます。

これは、主に地上展示機を出展する企業が、来場顧客の接待の為に設けるもので、地上展示機のアクセスの受付となる場所でもあります。多くは2階建て構造になっており、上階部分にテラスを設けて来場者に飛行展示を見る場所として提供しています。

写真:Boeing777Xのコックピット


地上展示機へ

地上展示機に向かいます。展示館を出て正面に今回ハイライトとなる、ボーイング777Xがあり、西側に向かってエチオピア航空のエアバスA350-900、エミレーツ航空エアバスA380、ウガンダ航空のエアバスA330neo、エアアラビアのA321、エアバルティックA220-300と続き、その先にKAWASAKI C-2がボーイングC-17グローブマスターとともに並びます。東側を向くと、アラスカ航空のボーイング737Max8とフライドバイの737Max、エティハド航空のエアバスA350-1000とボーイング787-10があります。先にはサウジアラビア航空のボーイング787-10とガルフエアのボーイング787-9が揃い、ロシアのイルクートMC-21-310がありました。

これほどまでに旅客機が勢揃いする展示は珍しく、エアバスやボーイングといったメーカーだけでなく、エアライン自身が保有機を披露する場という新しいエアショーの展示手法が取られていました。

今回のドバイエアショーでの目玉展示機は、ボーイング777Xです。同機は今回初の国外飛行となり、展示とともに派手な飛行展示も実施し、購入契約済のエミレーツ航空へ開発の進捗を披露していました。

写真:Boeing777Xの後部から見た機内

Boeing777Xの機内へ

機内に向かうとコックピットを含め、公開を制限する箇所はありません。まだ飛行検査中の機体は、機内での座席の装備は一部のみであり、検査機器が並び、内装パネルの無いむき出し状態を見ることができる貴重な経験でした。機内には重量バランスを取る大きな水タンクが装備され、ものものしい雰囲気です。主翼端が折れ曲がる従来にない構造を持つ機体ですので、その様子は多くの画像で残すことができました。

折れ曲がる主翼端

エミレーツ航空はドバイエアショー最大のエアバスA380をUAE建国50周年の記念塗装で地上展示していました。これは、当サイトの記事で紹介しましたので、機内公開の様子はひとつ前の記事をご覧ください。

エアショー会期中の毎日午後2時から5時までの3時間は飛行展示の時間です。
ここでのボーイング777Xは地上滑走中に折りたたんだ主翼をゆっくり展開させながら移動し、大きな仰角の離陸のあとに、主翼が上下に向くような派手なフライトを披露していました。まさに度肝を抜くという言葉が相応しい飛び方です。

ロシア機も展示された

もう一つの注目はロシア機のイルクートMC-21-310です。

同じくロシアのスホーイ・スーパージェット100(SSJ100)は60~100席のリージョナル機であり、イルクート機はボーイング737やエアバスA320と同クラスのひとまわり大きな単通路機になります。認証検査の試験飛行中の機体ですので、展示機機内は777Xと同様にコックピットや検査機器が装備された状態で公開していました。

イルクート機の機内

イルクートの女性社員2名が案内役となって機内を説明してくれました。座席はビジネスクラス、エコノミークラスをそれぞれ機内一部に設置しています。オーバーヘッドビンを開けて西側諸国旅客機と大差ない収納力をアピールしていました。

写真:MC-21-310の機内

飛行展示も行ったイルクート機

エンジンはロシア製のPD-14を2基装着しています。機体は安定した飛行展示もこなし、ロシア製単通路機のPRに懸命でした。

写真:MC-21-310の飛行展示

次回のドバイエアショーは2023年

地上と飛行の両展示があってこそのエアショーを堪能することができました。

写真:MC-21-310のコックピット


取材協力:エミレーツ航空


Koji Kitajima(きたじま こうじ)


日系、外資エアライン計4社で30年以上勤務し、旅客、貨物業務を空港と営業のフィールドでオールマイティに経験しました。航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材し、その内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを「空旅のススメ」コラムにて発信中。
航空ジャーナリスト協会に所属しています。

■プロフィール : https://airport.aviationworld.jp/koji-kitajima.html

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