アメリカ空軍サンダーバーズ本拠地ネリス「Aviation Nation 2025」の飛行
2025/05/21 航空機
米空軍サンダーバーズ(TB)は、ネバダ州のネリス空軍基地を本拠地とするアクロバット飛行チームです。1953年に誕生したチームは1983年からF16ファイティングファルコンを使用しています。
■ネリス基地でのエアショー
2025年4月5日、6日にエアショー「Aviation Nation 2025」が開催されました。この時期のネリスは温暖な気候で晴天の日が多くなります。基地はラスベガスのダウンタウンから北東に20㎞で20分しかかからない、街の中心地に近い便利な場所。
観覧者は基地の北側にあるモータースピードウェイに駐車してシャトルバスで会場入りすることになっています。
基地広報のニコル・ルースさん

基地広報のニコル・ルース大尉は、次のように説明してくれました。「エアショーはライブストリーミング配信されるので、来場しなくても見ることができます。サンダーバーズやF22のデモなどエキサイティングなものをたくさん見ることができますよ」
ミュージアム内部の展示の様子

■ミュージアムもある
TBのF16が屋外展示されている白い建物はホーム オブ ザ サンダーバーズと表記のあるミュージアムです。普段は平日のみの開館ですが、エアショーに併せて土日ともに午前は開館していました。
広報のセバスチャン・ラムワックさんが内部を案内してくれた

広報のセバスチャン・ラムワックさんは館内の案内役です。ブリーフィングルームを始めチームの歴史、機体の変遷、ユニフォーム、海外派遣時の贈り物、スポーツ選手などの著名人との交流などを説明してくれました。
チームの、広報・ファイナンス・メンテナンスの各スペシャリストなど様々な専門分野の担当者が紹介されていました。 地元コミュニティ貢献者らを飛行に招待し、感謝の意を表しています。
■開会式とパラシュータードロップ
午前11時、国家斉唱とともに開会式が始まり、パラシューターが舞い降ります。静寂の中で響く国歌と空からの祝福に、観客たちは自然と胸に手を当て背筋を伸ばしていました。観覧しているエプロン側からはアリゾナ州に続く山々が見えており、一目でネリスとわかる写真を撮ることができます。
■歴史と伝統の飛行展示
「ミスティ・ブルース」女性パラシュートチームによる編隊降下が幕を開けた。美しい態勢のままの着地が、ショーの幕開けにふさわしい印象を残しました。
続いて、「アンダウンテッド エアショー」ではヴァンズエアクラフトのRV7とRV8が華麗なフォーメーションで飛びました。
第二次世界大戦後に登場したイギリスの初期ジェット機「デ・ハビランド DH100 ヴァンパイア」は滑らかな飛行を披露。ジェット草創期の機体はエンジン音が静かで優雅な飛行が航空史の厚みを感じさせました。
ノースアメリカンSNJ-5テキサンの地上展示

「CAF SoCal Warbirds」は南カリフォルニアを拠点とするチームの編隊飛行で、B25-PBJ、P-51やノースアメリカンSNJ-5テキサンなど複数の機体が登場しました。
米海軍の「F/A-18E/F スーパーホーネット」による展示飛行もあります。
「KC-46 ペガサス」空中給油機はボーイング767-200の軍用型でローアプローチからの急上昇など巨体からは想像できない軽やかな機動飛行を披露しました。
ステファン・コビントンによる「コビントン・ピッツS2S」や
エアロバティックパイロット「ビル・スタイン」が操るエッジ540は、縦横無尽に空を駆け抜けます。
F22責任者パメルさんと家族

F-22 ラプターの指揮官に話を聞くことができました。「F-22デモチームの責任者で上級下士官リーダーのブレイディ・パメルです。年間約280日世界中を回り、F-22の優れた機動性を披露し、同時に次世代の隊員を募集のきっかけになるよう考えています」
圧倒的な機動飛行ののち、F-5との編隊「ヘリテージフライト」が披露されました。新旧の機体が共演する姿は、空軍の伝統と革新の象徴でもあります。
「ヴィッキー・ベンジング & P-51」ムスタングの飛行は、力強くも優雅でした。
REDBULLヘリコプターのアーロン氏

BO105Cヘリコプターパイロットのアーロン・フィッツジェラルドさんは、「今日はレッドブルヘリコプターを操縦し、飛行機と共に飛びます。スカイダイバーは3人いるので、20分のショーで、ヘリコプターの中でいろいろな楽しいことをする予定です」と嬉しそうに話してくれました。
TBのデルタフォーメーション

■フィナーレはTBの演舞
ショーの最後を飾るのはアメリカ空軍の象徴「サンダーバーズ」です。今回は5号機のエンジントラブルで5機編成での飛行でしたが、圧倒的なスキルの飛行演技が次々と繰り出されました。
特に予測できずに観客席の背後から接近し山側に向かって低空飛行するソロ機の爆音には驚き、全身が震えました。ナレーターの音声が耳に心地よく、会場も大盛り上がりです。
5番機ジェフリー・ダウニー少佐と地上支援者

演技終了後、パイロットと地上支援隊員たちは観客席前まで歩み寄り、笑顔で手を振り、サインに応じていました。飛行直後にも関わらず、5人ともに笑顔を絶やさず、一様に白い歯を見せながら観客にサインしています。観客との距離が一気に縮まる時間です。
子供たちとの交流

ホームベース基地での開催であり、初日にはTB飛行前に地元の子供たちとの交流の場面も設定されていました。アメリカと大統領に誠実さを誓う宣誓式のようなもので、最後にはTB隊員4名が子供たちの前に並び、腰を下ろす様子はとても厳粛な儀式に見えました。
地上支援者たちの結束

地上支援要員が隊列を作りチームワークを誇示し、飛行の安全を祈る様子は見ていて気持ちのいいものです。
■会場内は店舗も多い
会場内は、TBグッズなどが揃う土産物やハンバーガーやアイスクリームなどの飲食ブースも多くあります。日差しを遮る大屋根や移動式トイレも完備し、居心地良く過ごせるように工夫されていました。
全ては紹介しきれないのですが、地上展示機は6万フィートを飛ぶ「プロテウス」や、低コスト製造実証機の「M401シエラ」など多くの機体が並んでいました。国家予算が組まれ、入場は無償なことから来場者は防衛について考えてみても良いのではないかと思います。
「Aviation Nation 2025」は航空技術の進歩と、空軍の伝統が披露される場所でした。ネリス空軍基地というサンダーバーズの聖地で、空を見上げる者すべてにとっての夢と誇りが、確かにそこに存在していました。基地広報のローズ大尉は次のようなメッセージを残してくれました。「次回開催の2027年に会いましょう」
Koji Kitajima(きたじま こうじ)
日系、外資エアライン計4社で30年以上勤務し、旅客、貨物業務を空港と営業のフィールドでオールマイティに経験しました。航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材し、その内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを「Avian Wing」ブログにて発信中。航空ジャーナリスト協会に所属しています。