Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


キャセイパシフィック航空の新機内プロダクト「アリア・スイート」体験の旅で香港へ!

2025/01/31 航空機・空港・航空会社

■成田空港に到着するアリア・スイートが装備されたボーイング777-300ER

キャセイパシフィック航空が新たに導入したビジネスクラス「アリア・スイート」。装備の始まったこの新プロダクトを確認しに成田空港から香港に飛びました。

成田国際空港の第2ターミナルビルにあるキャセイパシフィック・ラウンジは2023年に改装され、2倍以上になった空間は駐機する航空機が見渡せる絶好の場所にあります。ワークスペースやシャワーがあるだけでなく、和洋中の軽食が月替わりのメニューで用意されています。ラウンジ内には、フラワーデザイン会社の装飾や有田焼の照明作品がディスプレイされ、落ち着いた空間が広がっていました。

ラウンジから機内へ

■成田空港ラウンジの様子

ボーイング777-300ERの機材に実際に向かうと、搭乗ドア付近から見る機内の様子がいつもと違い、オフィス空間のように感じます。ロゴの「ブラッシュウィング」が付けられた格子のある壁が淡い照明の中に浮かんでいました。これは、今まで経験した多くの航空機とは一線を画す上質な機内プロダクトだなとわかる素晴らしいデザインでした。

オフィス空間のようなスタイリッシュな機内

■機内搭乗口付近のお洒落な空間で客室責任者が迎えてくれる

アリア・スイートの1-2-1配列の個室が整然と並ぶ様子が見えており、フルフラットシートに加え個別のスライドドアを装備し、ビジネス旅行者などに快適な空間を提供しています。

シートに座ってまず目を引くのが、24インチの4K超高精細ディスプレイです。このスクリーンは、インフライトエンターテインメント(IFE)として映画やテレビ番組、音楽やフライトマップが楽しめ、Bluetooth 接続に対応しているため、個人持参の使い慣れたワイヤレスヘッドセットを使用することが可能です。

収納が充実のシートまわりの装備

■アリア・スイートのシート

シートには周囲にカスタマイズ可能な照明が設置されており、シーンに応じた明るさを選択できます。置くだけで反応するワイヤレス充電ステーションや、水やヘッドセットが用意され、鏡が捉えられた収納スペースのスマートストレージ。パスポートや眼鏡、貴重品を収納するのに最適な引き出し付きのスライド式コンソールなど、細部まで機能的に設置されています。通路側には上下可動式のひじ掛けがあるだけではなく、スライド式パーテションが装備されており、離着陸の時間を除き巡行中はいつでも閉めて個人空間を演出することが出来るのです。

アリア・スイートは、「JPA Design」と共同開発した特注のプロダクトで 「青空」のイメージを描くデザインです。 シートの製造は世界のエアラインが使用する 「コリンズ エアロスペース」のカスタマイズ製品で、レザーや上質なウールを使用しています。

シートは素材にまでこだわる

■個室ドアがならぶアリア・スイートのシート

シートの素材の一部には、ドイツの高級テキスタイルメーカー「rohi」が提供するバージンウールが採用されています。この素材は、柔らかな触り心地と高級感にあふれています。同社はカンタス航空や、フィンエアー、スターラックス航空など多くの世界の航空会社へデザイン会社とともに納入実績を持つ信頼あるブランドです。

機内では、象徴的な「キャセイジェイド」という落ち着いた雰囲気の緑がアクセントになり同社らしさを醸しています。「アーモンドゴールド」の繊細な色使いも新しいシートの特徴です。

また、アリア・スイートには「天空のギャラリー」として絵画作品が配置されており、キャビンに入った瞬間からデザインの美しさが、視覚的なアクセントとなっています。キャセイパシフィック航空は、芸術と伝統を大切にしていることから、香港と深いつながりを持つアーティストが手がけた作品群を機内に持ち込みました。飛行機がお客様を空でつないで目的地へとお連れするように、これらの絵画作品がお客様を別世界へと誘うというコンセプトになっています。

アート鑑賞ののち夕食へ

■アートを背に立つ客室乗務員のYukiさん(右)

日本路線の機内食では、根強い人気の茶そばを提供しています。また、すき焼き風や照り焼き風味など和食にちなんだメニューを工夫しています。食後にはハーゲンダッツが出てきますし、時期により変化はあるものの、チョコレートも用意されていますので、淹れたてのコーヒーとともに楽しめます。

香港発の日本路線においては、ビジネスクラスに香港フレーバーと称したメニューを導入しており現地の味が機内でも味わえます。その他は、長距離路線の一部の導入ですが「キャセイシグネチャー」メニューの提供を昨年より開始しています。

機内でほっと寛げる特別な時間を提供できるよう、上質なワインセレクションと淹れたてのコーヒー(ビジネスクラスはilly)を全てのクラスでご用意しています。長距離路線ではペールエールの「ベッツィービール」(ベッツィーはキャセイパシフィック航空導入初号機の通称)という、上空でより美味しく飲めるビールを特別醸造しています。ビジネスクラスでの食後のチーズとフルーツ盛りあわせのサービスも特別な時間を感じられるものです。

ゆったりとした食事時間

■ビジネスクラスメインディッシュ

機内エンターテインメント(IFE)には一般の映画・TV・音楽の他にマップモードとともに「操縦室モード」ともいえるユニークな機能が追加されていました。 このモードは飛行の仕組みやルート情報をコックピットで計器を見ているように視覚的に理解できる内容で、あたかも飛行しているように機外カメラと同時に楽しめ、航空ファンや興味を持つ乗客には特に魅力的に感じるでしょう。

キャビンクルーのYukiさんは、プロダクトについて「新しいデザインで全体的にモダンな作りになっています。全てのクラスで一新され、ビジネスクラスでは個室になるスライドドアと大きなディスプレイ画面が特徴です。皆様により良い時間を過ごして頂ける空間になっています」と説明してくれた。

彼女は自身の経歴について「今年の夏に大学を卒業したばかり、10月に入社し、12月頭までトレーニングを受けていました。これからも先輩方に教えて貰いながら頑張っていきたいと思います」と新人ながらしっかりと仕事の抱負を語ってくれました。

ビジネスクラスを実際に利用する場合には、東京⇔香港の往復ですと、閑散期の一例では18万円台からで利用することが出来ます。

香港のファーストクラスラウンジに行ってみた

■「ザ・ピア」ファーストクラスラウンジの中華朝定食

香港から復路搭乗前に「ザ・ピア」ファーストクラスラウンジを訪れる機会がありました。 このラウンジは、ホースシュー型カウンター が特徴的なバーエリア、ダイニングエリア、ティーコーナーで飲食を楽しみ、そしてビジネスコーナー、シャワールームとマッサージ室まで備えられており、フライト待ちの時間を効率的に利用できます。

さらに「ザ・リトリート」では、ゆっくりと昼寝を楽しむことが可能で、長距離旅の始まる前の身体の疲れを癒すには最適な施設でした。

実用性と快適性の両立したプレミアム・エコノミークラス

■機能的なプレミアムエコノミークラス

香港発ではプレミアム・エコノミークラスに搭乗しました。シートの構造としては、足元をサポートするフットレストが大きくせり上がり、大きくリクライニングすると楽な姿勢で休むことが出来ます。

外見上の大きな特徴は、ヘッドレスト部分に備え付けられたウィングと呼ぶせり出したパーソナルデバイダー で、隣席の搭乗者の動きが気にならない工夫がされています。中央部のDE席にはウィングが左右両側に、その他の席には片側にあり、内側にパーソナルライトが埋め込まれている点が優れています。

肘掛けにも収納場所があるなど実用的な工夫が多く見られました。シートにはコートフックが設置されていますので、上着がそばにあると安心できます。タイプAとCの両方に対応した充電ポートやAC電源も完備されており、デバイスの充電に困ることはありません。

レカロのシートは快適性をさらに高めるための工夫が随所に実施されており、シートの細部まで設計が印象的でした。

客室乗務員の案内を受ける

■Aiさん(左)と打合せする客室責任者

Aiさんが運んできてくれた機内食は、香港フレーバーのポークロールでした。ワンプレートでの提供ながら、陶器が使われたダイニングはぐっと豪華に見える優雅な食事時間に変わります。

トレーには、茶そばとフルーツ以外にもハーゲンダッツのアイスクリームと小さな箱に入ったチョコレートが載せられており、ガーリックトーストを置くとトレーは満載で、満足感の高い昼食になりました。

閑散期の運賃の一例では、東京⇔香港間をプレミアム・エコノミークラスで往復すると14万円台から利用することができます。

キャセイパシフィック航空の新機内プロダクトは、あらゆる乗客のニーズに配慮が光る内容でした。 アリア・スイートは、快適性、デザイン性、そして持続可能性の3拍子が揃った空間でまた、「ザ・ピア」ファーストクラスラウンジは、癒しと機能性の両面から飛行体験を豊かにする施設でした。

今後順次導入されていくこのアリア・スイートを含む新プロダクト機材は、日本-香港間の旅をそして香港以遠の長距離の目的地への旅も特別なものにしてくれる同社の新たな挑戦として、多くの乗客にとって魅力的な選択肢になるでしょう。

取材・写真・文:北島幸司

取材協力:キャセイパシフィック航空 ⇒ https://www.cathaypacific.com/cx/ja_JP.html

 


Koji Kitajima(きたじま こうじ)


エアラインで30年以上勤務経験を活かし、航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材した内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを
「Avian Wing」ブログにて発信中。航空ジャーナリスト協会に所属しています。





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