Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


ボーイング777とANAが歩んだ30年の軌跡

2025/12/28 航空機・航空会社

ANAが誇る大型の主力機として長年日本の空を支えてきたボーイング777が、就航30周年という節目を迎えました。2025年12月23日、羽田空港を舞台に開催された記念イベントの様子と搭乗の様子を、レポートします。

記念イベントの様子

ANAのボーイング777(トリプルセブン)が国内線に初めて就航したのは、1995年12月23日のことです。それからちょうど30年。かつての主力機であったボーイング747からその座を引き継ぎ、今やANAの長距離国際線や国内幹線において欠かせない存在となっています。

羽田空港第2ターミナルの53番ゲートで開催された記念イベントでは、社員から募集したトリプルセブンの写真やイラストが展示され、搭乗者やファンが足を止めていました。

子供向けの制服着用体験ブースも設置され、親子連れが笑顔で記念撮影を楽しむ姿が見られました。

30年という歳月は、当時この機体に乗っていた子供たちが、今では親となって次の世代を連れてくるほどの長い時間であることを改めて実感させます。

現役スタッフが語るトリプルセブンへの想い

■整備士の西川佳祐さん(31歳)、運航乗務員の越智和人さん(41歳)、客室乗務員の北島利紗さん(30歳)がフォトセッションに加わった

イベントの一つが、現役のパイロット、整備士、客室乗務員がトークセッションでした。

客室乗務員と777

客室乗務員の北島利紗さんはチーフパーサーに昇格した初乗務した777の沖縄便で修学旅行生が搭乗した時のこと。

満席で大変だった機内で着陸時に学生が拍手してくれたこと、嬉しく鮮明に覚えていると思い出を披露しました。

パイロットと整備士の777

運航乗務員の越智和人さんは、12年の運航乗務員経験の中で9年間操縦した思い入れの深い機体ですと言及しました。

整備士の西川佳佑さんは、パイロットとともに企画したこのイベントは昨年今頃から調整を始め、皆様にお会いすることを楽しみにしてきました、とそれぞれの立場のプロフェッショナルたちの言葉からは、単なる機材以上の愛着が感じられました。

ゲート前でも挨拶が・・・

■フライトオペレーションセンターB777部部長である林機長(56歳)の挨拶

ゲート前では客室乗務員が30年前の就航当時の制服を着用して参加しました。

フライトオペレーションセンターB777部の林一也部長が挨拶に立ち、パイロット人生大半の18年間777を操縦し、機長昇格も果たした特別な航空機ですと話し、安全運航を続けてきたことへの誇りと、支えてくれた乗客への感謝が込められていました。

特別塗装機で行く羽田から伊丹への記念フライト

■グループ社員の写真も展示された

今回、記念すべきNH23便(羽田発伊丹行き)に投入された機材は、ボーイング777-200ERの機番「JA743A」でした。この機体は、その鮮やかな黄色い機体デザインで親しまれている「C-3PO ANA JET」です。30周年という記念すべき日に、この特別な塗装機が選ばれたことは、搭乗するファンにとっても大きなサプライズとなりました。

搭乗口付近では、搭乗者にはストラップ、搭乗証明書、整備士とパイロットがデザインしたステッカーの記念品が手渡されました。12時2分、390名の乗客(うち幼児4名)を乗せたNH23便は、多くのANAスタッフが横断幕を掲げて見守るランプエリアを通り、滑走路へと向かいました。

通常よりも低い高度で大阪へ

■低高度の機窓からは富士山が見えた

12時24分、力強いエンジン音とともに羽田空港を離陸した機体は、冬の澄んだ空へと舞い上がりました。機内では客室乗務員によるコールドリンクサービスが行われ、コックピットからは、通常より低い18000フィート(5400m)対地速度700㎞/hで飛行していると案内がありました。

加えて、「このトリプルセブンが築き上げた安心という絆はこれからもANAのDNAとして大切に引き継いで参ります」とアナウンスが流れ、短い飛行時間ながらも、30周年を祝う特別な空気が流れていました。

折り返し便を見送る

■伊丹スカイパークから777‐200ERの離陸を見た

NH23便が伊丹空港に到着した後、その姿を見届けようと、航空ファンが隣接する「伊丹スカイパーク」に詰めかけていました。この公園は滑走路に並行して整備されており、離着陸する機体を間近で見ることができる国内屈指のスポットです。

14時過ぎ、伊丹からの折り返しNH028便として再び滑走路に現れた「C-3PO ANA JET」が、黄色い機体を輝かせながら力強く離陸していく様子は、まさに30周年イベントのフィナーレにふさわしい光景でした。

集まった人々は、カメラを向けたり手を振ったりしながら、日本の空を支え続けるトリプルセブンへの敬意を表していました。

777Xに繋がる系譜

■C3-PO ANA JETがトーイングされてくる羽田空港にて

次世代機の導入が進む中でも、ボーイング777は依然としてANAの機材ラインナップにおける重要機材です。

高い輸送能力と信頼性を備えたこの名機は、発注した777Xに置き換えられて、これからも多くの人々の夢と希望を乗せて、日本の空を飛び続けていくことでしょう。

取材協力:ANAHD 

取材:北島幸司

Koji Kitajima(きたじま こうじ)


エアラインで30年以上勤務経験を活かし、航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材した内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを「Avian Wing」商用サイトにて発信中。航空ジャーナリスト協会に所属しています。

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