Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


【ドバイエアショー】 エミレーツ航空とワンチームを形成するフライ・ドバイの未来像

2025/12/11 航空会社

 ドバイエアショー会場で注目を集めたのが、フライ・ドバイが地上展示として機内を開放したボーイング737 MAX 8です。訪問者に対し、最新鋭のナローボディ機を公開したことは、同社の現在の成功と、今後の積極的な展開をアピールしています。

フライ・ドバイは2009年に運航を開始した比較的若いLCCです。運航開始当初から、ドバイ国際空港の近隣諸国や未開拓市場へのネットワーク拡大を担い、現在では88機を運航する中堅エアラインへと急成長を遂げました。

世界の結節点をハブに

■ナローボディでフルフラットのビジネスクラスを装備している 

 この急成長は、ドバイのアジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ結節点に位置する、地の利と明確な戦略に基づいています。

LCCでありながら、737 MAXのような最新鋭機に投資し、ビジネスクラスも提供することや最近ではエコノミークラスの乗客にも機内食を無償で提供するなど、多様な旅行者のニーズに応える柔軟なビジネスモデルを確立しているのです。

エミレーツ航空会長が語る提携の深い意義

 このフライ・ドバイの成長と、ドバイの航空戦略において不可欠な関係にあるのが、世界的なメガキャリアであるエミレーツ航空です。

エミレーツ航空グループ会長のシェイク・アハメッド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム殿下は、両社の関係が単なる協力以上の、より深い戦略的な連携であることを強調しています。

エミレーツ航空グループ会長の発言

■地上展示でコックピットを公開していた  

 会長の発言の要旨には、ドバイ政府と連携した明確な戦略的意図が示されています。それは、フライ・ドバイを単なる地元航空会社としてだけでなく、市場に変化をもたらす重要な原動力として育て上げることです。両社が協力し合うことで、ドバイ発着の広範な空域を支配下に置き、国際的な競争や脅威からハブとしての地位を堅固に守り抜くというビジョンです。

これは、単に路線網の拡大に留まらず、ドバイという国家戦略として、空の支配権と安全性を確保するという強い意思を反映しているのです。

この発言は、両社の提携が単なる商業的な協業ではなく、ドバイの経済と国際的な地位を維持するための国家レベルのインフラ戦略であることを示しています。両社がお互いを補完し合いながら共に成長することで、ドバイは名実ともに世界の航空路の中心地となることを目指しているのです。

両社の戦略的役割分担

■ビジネスクラスは1人席の列もある

エミレーツ航空とフライ・ドバイは、今や競争相手ではなく、「ワンチーム」として機能し、協力し合う関係へと進化しています。この提携は、両社が持つ異なる強みを相互に補完し合うことで、最大の効果を発揮しています。

エミレーツ航空はワイドボディ機であるエアバスA350やA380、ボーイング777といった大型機を中心とした長距離国際線を担う一方で、フライ・ドバイはナローボディ機である737 MAXを活用し、ドバイから近隣の中東諸国やアフリカ、中央アジアなどの短・中距離路線を網羅しています。

今後はフライ・ドバイにボーイング787が導入されることで、どのような戦略の変化が見られるかが楽しみです。

ドバイの空の経済的インパクト

両社の戦略的な統合は、ドバイの経済発展と観光振興の基盤です。フライ・ドバイのLCCとしての柔軟性と効率性、そしてエミレーツ航空の揺るぎないブランド力と広大なグローバルネットワークが組み合わさることで、他のどの航空ハブにも真似のできない強力なエコシステムを構築しています。

未来へ向けての覚悟の展示

ドバイエアショーでの737 MAX 8の展示は、この戦略の一端を示すものであり、フライ・ドバイの若いフリートと活力が、ドバイの航空ハブとしての未来を担う重要な要素であることを改めて印象づけました。

今後の両社の協力体制の深化は、中東地域の航空勢力図を塗り替え、UAEの国際的な影響力を高めていくことになるでしょう。

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