【シンガポールエアショー】ボンバルディアが放つ究極のビジネスジェット Global 7500の衝撃
2026/02/15 航空機
かつてカナダのボンバルディアは、リージョナルジェットのCRJシリーズやプロペラ機のQシリーズ、さらには小型幹線のCSシリーズ(現エアバスA220)など、民間航空機市場で多角的な展開を行っていました。
しかし、激しい市場競争の中で事業ポートフォリオを大胆に刷新し、現在はビジネスジェット事業に経営資源を完全に集中させています。この選択と集中によって生まれたのが、同社のフラッグシップ機であるGlobal 7500です。
商用機部門を譲渡したことで、ボンバルディアは航空機の「移動手段」としての効率性だけでなく、究極の「空間品質」を追求できるメーカーへと進化しました。その姿勢は、現在製造されている機体の細部にまで色濃く反映されています。
シンガポールに放つボンバルディアの威信を賭けた航空機

シンガポールエアショーにおいて、Global 7500の機内を実際に取材する機会を得ました。タラップを上がり機内へ足を踏み入れた瞬間に感じるのは、既存のプライベートジェットの概念を覆す圧倒的な居住性です。
特筆すべきは、機内空間が最大4つの独立したリビングスペースで構成されている点です。これにより、ビジネスミーティングを行うエリア、食事を楽しむダイニングエリア、そして完全にプライバシーが保たれたマスターベッドルームを分けることが可能になっています。
レトロモダンなクルーが案内する機内

実際に機内に入り、レトロな装いながらもモダンな制服のクルーが案内するキャビンを観察すると、そのしつらえはもはや航空機のそれではなく、高級ホテルのスイートルームそのものです。
壁面のウッドパネルの継ぎ目や、シートのステッチに至るまで、職人技を感じさせる緻密な仕上げが施されています。この品質の高さこそが、ボンバルディアが「唯一残した事業」としてプライドをかけて守り抜いている領域であることを実感させます。
長距離飛行にこそふさわしい

長距離飛行を支えるスムースライド・テクノロジーと快適性 Global 7500の凄みは、目に見える豪華さだけではありません。最大航続距離7,700海里(約14,260km)を誇り、ニューヨークから香港、ロンドンからシンガポールまでをノンストップで結ぶ能力を持っています。
これほどの長距離飛行において、乗客の疲労を左右するのは機体の揺れと気圧、そして光の制御です。
特徴のあるキャビン

ボンバルディア独自の「スムースライド・テクノロジー」を採用した主翼は、乱気流の中でもしなやかに衝撃を吸収し、極めて安定した飛行を実現します。
また、キャビン気圧は高度13,700メートルを飛行中であっても、地上に近い低高度の状態に維持されるため、到着後の時差ボケ軽減に大きく寄与します。
特徴的なシート

さらに、人間工学に基づいて設計された「Nuage(ヌアージュ)シート」は、従来の航空機用シートにはなかったリクライニング機構を備えており、無重力状態に近い姿勢での休息を可能にしています。
取材時に座ってみると、体圧が完璧に分散される感覚があり、10時間を超えるフライトであっても苦痛を感じさせない工夫が随所に凝らされていました。
ボンバルディア社員の案内で見る機内

■Bombardier PR & 広報のChristiana氏
ビジネスジェット特有の高度なエンターテインメントと通信環境 現代のビジネスジェットにおいて、地上と変わらない高速通信環境は必須条件です。Global 7500はKaバンドの高速Wi-Fiを完備しており、機上でのビデオ会議や大容量データの送受信もストレスなく行えます。
キャビンマネジメントシステムには「nice Touch」と呼ばれる直感的な操作パネルが採用されており、照明、温度、エンターテインメントを指先一つでコントロールできます。
シンガポールの強い日差しの中でも、機内の窓に備えられた電子シェードを調整することで、瞬時に最適な読書環境や睡眠環境を作り出すことができました。
選択と集中でよりよいビジネスジェットを

ボンバルディアが切り拓くビジネス航空の未来 民間機事業から撤退し、ビジネスジェット一本に絞ったボンバルディアの決断は、結果として製品のクオリティを極限まで引き上げることに成功しました。
彼らが提供しているのは単なる航空機というハードウェアではなく、世界を飛び回るエグゼクティブに提供する「時間」と「活力」という付加価値です。
ボンバルディアのロゴを尾翼にあしらう

Global 7500の後に続くGlobal 8000の発表も含め、同社の勢いは加速しています。かつての総合航空機メーカーから、世界最高峰のビジネスジェット専門メーカーへと脱皮したボンバルディア。シンガポールで触れたその機体には、カナダの誇りと、空を飛ぶことの豊かさを追求し続ける執念が宿っていました。
これからのビジネス航空市場において、ボンバルディアが示す「究極の品質」は、競合他社にとって極めて高いベンチマークであり続けるはずです。私たちが目にしたその空間は、まさに空を飛ぶ芸術品と呼ぶにふさわしいものでした。
協力:ボンバルディア

HP⇒https://bombardier.com/en/aircraft
Koji Kitajima(きたじま こうじ)
エアラインで30年以上勤務経験を活かし、航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材した内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを「Avian Wing」商用サイトにて発信中。航空ジャーナリスト協会に所属しています。
