Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


【ドバイエアショー】ロシアはヘリコプターとアクロバット飛行で航空技術を披露

2025/12/14 航空機

ドバイエアショーにおいてロシアは、ロシアンヘリコプタ-社製のヘリコプターであるKa-32A11BCの展示と、華麗なアクロバット飛行チーム「ロシアン・ナイツ」の演技を通して、航空技術力を世界に示しました。

Ka-32A11BC ヘリコプターの歴史

Ka-32A11BCは、ロシアのカモフ設計局が開発した多目的ヘリコプターの最新民間型です。その起源は、1970年代にソビエト海軍向けに開発された対潜水艦作戦機Ka-27(NATOコードネーム:ヘリックス)に遡ります。

多目的な用途

Ka-32の設計の基礎は、Ka-27の優れた海洋運用能力です。最大の特徴である二重反転ローターシステムは、テールローターを不要とし、高い安定性とパワー効率を実現しました。この構造は、特に艦船上や山岳地帯などの狭く厳しい環境での運用に革命をもたらしました。

民間型として開発されたKa-32A11BCは、この堅牢な設計を引き継ぎ、森林火災の消火、建設クレーン作業、捜索救助活動といった多岐にわたる任務で使用されています。2000年代にカナダやヨーロッパ(EASA)などで型式証明を取得したことで、国際的な市場での信頼性が確立されました。

ヘリコプターコックピットの公開

今回のドバイエアショーでは、地上展示されていたオレンジ色のKa-32の派生型(写真ではKa-32A11Mと見られます)のコックピットに筆者は実際に入ることができました。

普段は足を踏み入れることの機会の少ないロシアのヘリコプターの操縦席に座ったことは、貴重な体験でした。外から見るよりもずっと広々としており、パイロットの視点を体感することができました。特に、座席からの見晴らしの良さは格別で、世界最高レベルの『空飛ぶクレーン』の運用環境を肌で感じることができました。」

この体験は、この機体が持つ堅牢さと、国際的な消防・救助活動に貢献する重要な役割を強く認識させてくれました。

ロシアン・ナイツのアクロバット飛行と緻密な連携

「ロシアン・ナイツ」は、1991年4月5日に結成された、ロシア航空宇宙軍(旧ロシア空軍)所属の公式アクロバット飛行チームです。彼らの任務は、ロシアの最新鋭戦闘機の能力と、パイロットのプロフェッショナリズムを世界に示すことです。

創設当初は、高い機動性で知られるSu-27戦闘機を使用していましたが、2016年からはSu-30SM多用途戦闘機へと機材を更新しました。

Su-30SMは、推力偏向ノズル(TVC)という先進技術を備えており、これにより彼らはさらに複雑で、超機動的なアクロバット飛行が可能となりました。彼らは、世界でも珍しい6機編隊+4機での密集飛行を披露するチームとして知られています。

驚異的な編隊飛行の目撃

ドバイエアショーの飛行展示で目撃したロシアン・ナイツのアクロバット飛行は、まさに圧巻の一言でした。

ロシアン・ナイツの飛行を見た際、驚いたのはその緻密な編隊飛行のレベルの高さでした。ほとんど触れ合うのではないかと思われるほどの近さで、ダイヤモンド隊形などの機動を披露していました。

Su-30SMのエンジン音は大地を揺らし、一糸乱れぬ正確な飛行は、彼らが世界トップクラスの技術を持つことを証明していました。

ロシアとドバイの関係性を考える

■ロシアンヘリコプターKa-32A11Mの機内

2021年のドバイエアショーでは民間機のMC-21がフライトしましたが、今回は姿を見せませんでした。

その後発生したウクライナ戦争により、中立な立場を貫くドバイに特にロシアの富裕層が流れ込み独特なバランスの関係を維持しています。そのような関係性からもロシア機の出展が実現しましたす。

ドバイエアショーという舞台でロシアの航空技術の多様性と洗練されたスキルを同時に感じさせてくれました。

 << 前のページに戻る