【ドバイエアショー】チェコの LET L410NG ドバイで見た「堅牢設計機」の現在
2025/12/13 航空機
ドバイエアショーは、最新鋭の戦闘機や巨大なワイドボディ機が主役となることが多い場所です。しかし、その会場の一角で、筆者はチェコ製のターボプロップ機、LET L410NG(機体番号OK-JRP)の姿を見つけ、思わず足を止めました。
LET L410NGは、チェコ共和国の航空機メーカーであるLET Aircraft Industriesが製造する、STOL性能に優れた小型旅客・輸送機です。最新のアビオニクスとエンジンを搭載し、1969年に製造されていた従来のL410シリーズの性能を大幅に向上させたモデルとして注目されています。
この機体を見た時、55年を超える息の長さと、今なお第一線で活躍している事実に、深い感銘を受けました。同時に、過去の記憶が蘇り、何とも言えない懐かしさが込み上げてきたのです。
時代を駆け抜けた旧型機とインターフルクの記憶

筆者がこの機体に対して特別な感情を抱くのは、旧型機であるL410が、かつて東ヨーロッパの空で重要な役割を果たしていたことを知っているからです。特に、東ドイツのナショナルフラッグキャリアでありのちにルフトハンザドイツ航空に吸収されたインターフルクの機材として活躍していた姿は、記憶に残っています。
旧型機の飛んだ頃

■乗降口からエンジンを見たところ
当時のL410は、整備環境が整っていない辺境の飛行場や、未舗装の滑走路といった過酷な環境下での運用を求められていました。西側諸国の航空機に比べて、非常にシンプルで頑丈、そして信頼性の高い設計が施されており、それが旧東側諸国やアフリカ、アジアなど世界各国で広く採用された最大の理由でした。
技術の進化が目覚ましい現代において、その基本設計が半世紀にわたり受け継がれ、新型機として生まれ変わっているという事実は、まさにL410シリーズがどれほど本質的に優れた、時代のニーズに応える設計であったかを物語っています。
現在でも当時から生産された1200機の機体のうちの3分の1が世界で飛んでいるとのこと。ドバイの華やかな会場で、この「生きた歴史」の新型機に出会えたことは、筆者にとって非常に感慨深い出来事でした。
NGの進化

新型機であるNG(New Generation)モデルは、パワフルで燃費効率の高いGE H80エンジンと、新設計の5枚ブレードプロペラを採用し、航続距離とペイロードが大幅に向上しています。
また、現代的なガーミン社製グラスコックピットが導入され、パイロットの負担軽減と安全性強化が図られています。
堅牢な機体

最も感心するのは、その内部構造と設計が旧型機から受け継いだ「堅牢性」を強く感じさせた点です。客室に入ると、最新の機材に見られるような過度に装飾された内装ではなく、実用性を重視した、非常に頑丈な作りになっていることがすぐに理解できます。
床や壁、座席の取り付け部など、機体の各所から伝わってくるのは、「何があっても飛び続ける」という設計者たちの強い意志です。
見事な進化

■コックピットにドアがある
この設計は、未だに世界中の僻地や過酷な気候条件の地域で、旅客や貨物の輸送を支えるうえで欠かせない要素です。ドバイという最先端の都市で、その「実用的な強さ」を改めて肌で感じ、この機体が今後も世界の空で息長く活躍していくことを確信しました。
LET L410NGは、過去の信頼性を基盤に、現代の技術を融合させた見事な進化形です。この機体の記憶を持つ一人として、今後のさらなる活躍に期待を寄せています。
取材協力:LET Aircraft Industries
