Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


【ドバイエアショー】エミレーツ航空地上展示は多国籍キャビンクルーの歓迎で8.2万人訪問

2025/12/09 航空機・航空会社

ドバイエアショーでのエミレーツ航空の地上展示は、航空業界関係者にとって、非常に魅力的なイベントとなりました。通常、大規模なエアショーにおける航空機の機内訪問は、セキュリティ上の理由や時間的、人的制約から、見学時間を制限し、招待されたVIPのみに限定されています。

しかし、エミレーツ航空は、同社が定期就航させている3機種、エアバスA350-900型機、エアバスA380-800型機、そしてボーイング777-300ER型機の全てについて、開催期間中の常時訪問を可能とするという特別な対応を取りました。このオープンな姿勢は、同社のサービスの透明性と自信を示すものであり、多くの来場者に実際の機内体験を提供する機会となり、大きな注目を集めました。

日本人キャビンクルーの活躍

■日本人キャビンクルーの松岡さん

エミレーツ航空の地上展示において、エアバスA380型機は、その堂々たる巨大な機体と、随所に豪華な意匠が凝らされた内装で知られ、終日、多くの訪問者が列をなしていました。この中でA380の機内案内役の一人として、キャリア12年の経験を持つ高知県出身の日本人客室乗務員、松岡至宝さんが勤務していたことは、日本の来場者にとって特に嬉しいサプライズとなりました。

松岡さんは、洗練されたプロフェッショナリズムと、日本ならではのきめ細かく温かいおもてなしの心で、機内の特長やエミレーツ航空が提供する質の高いサービスについて熱心に解説していました。多くの訪問者との交流を通じて同社の魅力を直接伝え、来場者に深い印象を与えていたのです。

人への投資を惜しまないエミレーツ航空

また、松岡さんのようなベテランクルーによる案内だけでなく、機内では、エミレーツ航空が擁する多国籍な客室乗務員チームが、来場者の希望する言語で生き生きと、そして情熱的に各クラスのシートや設備、サービスに関する解説を行っている姿が見られました。

彼らは、出身国の多様性を活かしたフレンドリーな接客で、グローバルな航空会社としてのエミレーツ航空の活気ある企業文化を体現しており、その真摯な説明ぶりは、同社の「人」への投資の大きさを示しているように感じられました。

A350-900も展示へ

今年、新たに機材を受領したばかりのエアバスA350-900型機も、多くの来場者の関心を集めていました。この機材は、エミレーツ航空が特に力を入れており、業界でも注目度の高いプレミアムエコノミークラスの紹介に焦点が当てられていました。このプレミアムエコノミークラスは、単なる中間クラスとしての位置づけに留まらず、従来のビジネスクラスに近い快適性を提供することを目指しており、特に機内食の質の高さが強調されていました。

地上展示では、実際に機内で提供される、食器や盛り付けにまでこだわった質の高い食事が披露されており、その充実したメニューと洗練されたプレゼンテーションは、このクラスの搭乗体験を大きく向上させる要素として、来場者に強い印象を与えていたのです。

ファミリー層も重要なお客様

さらに、エミレーツ航空がファミリー層を重要な顧客と捉えていることも、展示内容から読み取ることができました。機内サービスの展示コーナーでは、お子様連れの旅行をサポートするための細やかな配慮が行き届いたアメニティが、充実したラインナップで展示されていました。可愛らしいデザインのぬいぐるみやおもちゃ、そして実用的なアイテムなど、お子様が機内で退屈せず、快適に過ごせるように工夫されたアメニティの数々は、親御さんたちの関心を集め、同社が提供するサービスの幅広さと深さを改めて認識させました。

こうした細部にわたる配慮は、単なる移動手段としてではなく、「空の旅」そのものを楽しんでもらいたいという、エミレーツ航空のホスピタリティ精神を如実に示していると言えるでしょう。

82000人以上が訪問

この地上展示に対する来場者の反響は非常に大きく、エミレーツ航空の公式発表によれば、ドバイエアショーの期間中に82,000人以上の来場者が同社の機体展示を訪れたとされています。

これは、上記のように主力機材の常時訪問を可能とした同社の積極的な取り組みが、航空業界関係者や一般の来場者双方にとって非常に魅力的であったことを示しています。

スターリンクのデモも

■スターリンクのボタンから接続を案内するCC

また、展示機材の一つであるボーイング777-300ER型機の機内では、次世代のインターネット接続サービスとして近年注目を集める「スターリンク」をエミレーツ航空の機材に初めて搭載したデモンストレーションが実施されました。このデモは、エミレーツ航空が顧客体験の向上と、最新の技術を積極的に導入する姿勢を具体的に示すものでした。

ネットスピードも体感

機内で実際に高速で安定したインターネット接続を体験できる機会は、将来の機内サービスの一端を垣間見せるものであり、技術に関心の高い多くの来場者の関心を集めました。

IFE画面では既にスターリンクのボタンも設置されており、筆者が現地で計測した数値は下り300Mbpsにも達していて、これが上空でも実現できれば一般的な地上での接続環境と比べても遜色のない、充分に満足のいく速度であったと言えます。これにより、搭乗中に動画ストリーミングや大容量のデータのやり取りも快適に行えることが期待されます。

未来志向の展示へ

■プレミアムエコノミークラスのアップグレードされた機内食

エミレーツ航空は今回のドバイエアショーを、単なる機材展示の場としてではなく、同社の提供する最高水準のサービスと、未来志向の技術革新の姿勢を効果的に伝える重要なPRの場として最大限に活用していました。

豪華な機内、細やかなサービス、そして最先端の接続技術を体感できる貴重な機会として、同社の地上展示は、今年のドバイエアショーのハイライトの一つとなっていたことは間違いありません。

取材協力:エミレーツ航空

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