Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


【空飛ぶクルマ】 東京で初フライトのSkyDriveが示した空の一歩

2026/02/24 航空機

■2026年2月24日午前都内の空を飛ぶSkyDriveの「BD-05」

東京都の臨海副都心エリアにて、次世代の移動手段として期待される「空飛ぶクルマ」の社会実装に向けた飛行実証が行われました。今回の実証は、東京都が採択したコンソーシアム(三菱地所、兼松、SkyDriveの3社)によるもので、機体の飛行だけでなく、旅客ターミナルの運用を含めた一体的なシステムが公開されました。

国内初となる「ターミナルと機体」の一体運用

■左から三菱地所 丸の内業務企画部主事 土山浩平氏、兼松 航空宇宙部第一課 課長代理 中村康平氏、SkyDrive 代表取締役CEO 福澤知浩氏

今回の実証における最大の特徴は、単に機体を飛ばすだけでなく、実際の旅客運用を想定した「バーティポート(離着陸場)」のインフラを一式揃えた点にあります。三菱地所の土山氏は、これまでの各地での実証が「機体の飛行」に主眼を置いていたのに対し、今回は鉄道の駅や空港にあたる「旅客インフラ」を組み込んだ運用であり、国内初の試みであると述べました。

特に注目すべきは、今回使用されたターミナルの構造です。東京ビッグサイト駐車場という制約の多い立地条件をクリアするため、トレーラーハウスを活用した「動産型ターミナル」が採用されました。これにより、法規制を遵守しつつ、短期間かつ低コストでの設置が可能となっています。

待ち時間を最小化する運営システム

■バーティポート内に設置されたトレーラーハウス型ターミナル

ターミナル内の運営システムについては、兼松の中村氏より詳細な説明がありました。社会実装を見据え、以下の3つの主要システムが導入されています。

1. 旅客管理システム 空港での煩雑な手続きを簡略化するため、顔認証によるチェックインを導入。顔がチケットの代わりとなり、搭乗から降機までシームレスな体験を提供します。また、機体のバランスを保つため、チェックイン時に自動で体重測定を行う仕組みも備えています。

顔認証で搭乗へ

■顔認証し、体重を測るデモを見せる案内役の女性

2. リソースマネージメントシステム  離着陸場の予約状況や充電器の使用状況を統合管理します。これにより、機体の混雑を防ぎ、効率的な運用を実現します。

独自の空域管理が予定される

■ヴァーティポートの情報を発信する

3. 空域監視システム(シチュエーション・アウェアネス) 離着陸場周辺の空の交通状況や気象情報をライブでモニタリングし、運航事業者に提供します。多数の機体が飛び交う未来の安全を支える「管制」の役割を担います。

都市部に最適化された機体「SD-05」の性能

■一人で機体を移動させることが出来る

実証飛行で使用されたのは、SkyDriveが開発した「SD-05」です。代表取締役CEOの福澤氏は、この機体が「都市部での運用に最も適したコンパクトさ」を持っていることを強調しました。
機体の主な特徴と飛行性能は以下の通りです。

• e VTOL 12個のモーターとプロペラを備えたマルチローター型を採用。これにより、20メートル四方という極めて狭いスペースでの離着陸を可能にしています。

静音性を実証

• 高い安全性と静音性 複数のプロペラを精密に制御することで、ヘリコプターに比べて振動や騒音が大幅に抑えられています。もし一部のモーターが故障しても、残りのモーターで安全に飛行を継続できる冗長性を確保しています。

飛行実証の結果

飛行を終えてスカイツリーが遠望できる都会の中を格納庫に戻る機体

• 飛行実績 今回のデモでは、高度約13メートル、速度秒速4メートルで海側へ150メートル飛行しました。約3分30秒のフライトを通じ、前後の移動や旋回など、安定した操縦性が披露されました。

いつの間にか飛び上がったと感じるスムーズさであり、上空を飛ぶ東京ヘリポートを離陸したヘリコプターよりも格段に低い飛行音が体感できました。

実現に近づく空の移動革命

■ターミナル内の搭乗待合テラス

今回の飛行は遠隔操縦によって行われましたが、将来的には自律飛行への移行も視野に入っています。最大離着陸重量は約1.5トンと一般的な乗用車と同程度であり、カーボンニュートラルに貢献する電動モビリティとしての側面も持ち合わせています。

東京都の社会実装実験

クリアな視界を持つ「SD-05」は、単なる移動手段としてだけでなく、東京の素晴らしい景色を楽しむ観光資源としてのポテンシャルも秘めています。

今回の飛行実証は、インフラ、システム、機体の3要素が揃ったことで、社会実装が具体的な段階に入ったことを示す重要な一歩となりました。

取材協力:
SkyDrive https://skydrive.co.jp/
 
東京都HP 
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/02/2026020319
 

Koji Kitajima(きたじま こうじ)


エアラインで30年以上勤務経験を活かし、航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材した内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを
「Avian Wing」商用サイトにて発信中。航空ジャーナリスト協会に所属しています。

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