【ドバイエアショー】リヤド航空が示す新時代の航空戦略
2025/12/08 航空機・航空会社
ドバイエアショーにおいて、サウジアラビアの新興キャリアであるリヤド航空は、その個性的な出展をもって大きな注目を集めました。
通常、新規就航社が国際的なエアショーに参加する場合、自社の主力となる大型旅客機、例えば受領間もないボーイング787型機などを地上で展示し、その機体の威容を来場者に直接アピールするのが一般的です。しかし、リヤド航空はこの定石を踏まず、地上展示のラインナップにおいて、意外な戦略を打ち出しました。
展示の中心となった回転翼機と電気自動車

■エアショー開幕日にルシード電気自動車をラッピング中
リヤド航空が地上に展示したのは、旅客機ではなく、エアバス・ヘリコプターズ製のH160B型機で、機体番号HZ-HC83を誇らしげに掲げていました。
この選択は、同社が目指す「点と点を結ぶ」移動の未来、そしてプレミアムな顧客体験への強いコミットメントを示唆していると言えます。
EVとともに

さらに興味深かったのは、このヘリコプターの傍らに、リヤド航空のコーポレートカラーである紫色に美しくラッピングされたルシードの電気自動車が展示されていた点です。
これは、サウジアラビアが進める自動車産業への投資や、環境への配慮といった国家戦略と、航空会社としての先進的なブランドイメージを重ね合わせる、極めて巧妙なプレゼンテーションであると感じました。
シャレーで体験する革新的なビジネスクラス

大型旅客機の機体展示を行わない代わりに、同社はシャレーにおいて、来場者への体験提供に注力していました。
シャレー内には、リヤド航空のボーイング787型機に搭載されるビジネスクラスシートがペアで設置されており、来場者は実際に座り心地を確かめ、その快適さと先進的なデザインを体感することができました。これは、デジタルとホスピタリティを重視する同社のサービス哲学を具現化した展示方法です。
CEOと遭遇

筆者がシャレーを訪れ、シートの快適さを体験している丁度その時、同社CEOであるトニー・ダグラス氏と偶然遭遇しました。同氏は、エティハド航空などの要職を歴任した航空業界の重鎮であり、新しい航空会社を率いるその手腕には大きな注目が集まっています。
CEOにメッセージ

ほんの短い時間でしたが、筆者はダグラスCEOに対し、「日本への就航を心待ちにしています」と直接伝えることができました。すると、ダグラスCEOはそれに応え、満面の笑顔で力強く頷いてくれました。
この一瞬の交流は、単なるビジネス上の社交辞令を超え、リヤド航空が今後アジア、特に日本市場を重要視しているという、静かなる意思表示のように感じられました。
新時代のエアラインへ

このドバイエアショーでの出展戦略は、リヤド航空が既存の航空会社とは一線を画し、環境、デジタル技術、そして最上級の顧客体験を軸とした、新時代のエアラインを目指していることを雄弁に物語っています。
特にダグラスCEOとの邂逅は、同社の日本市場に対する前向きな姿勢を肌で感じさせてくれる、エピソードとなりました。
取材協力:リヤドエア
