Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


【ドバイエアショー】エティハド航空A380の華麗なフライパスと最新鋭A321LRの地上展示

2025/12/03 航空機・航空会社

■華々しい開幕を飾ったA380の雄姿

エティハド航空は、UAEの首都アブダビを本拠地とするキャリアです。隣接するドバイで開催された世界最大級の航空宇宙イベント、「ドバイ・エアショー」において、同社は存在感を示しています。

特に、エアショー開幕時には、多くの観客の視線を集める華々しい演出が行われ、エティハド航空は、後方にフライドバイのボーイング737を従えてのエアバスA380型機によるフライパス(低空飛行)を実施しました。

UAEの首都アブダビを拠点とするエアラインの意気込み

■A321LRの洗練されたデザイン

長らくパンデミックの影響や燃料効率の観点から、一部でその将来が危ぶまれていたA380ですが、エティハド航空は需要の回復に伴い、同機を戦略的に主要路線へ再投入しています。ドバイ・エアショーでのA380のフライパスは、その堂々たる姿と威容を改めて世界に示す機会となりました。

超大型機は、優雅に、かつ力強く飛行し、エアショーの開幕にふさわしい祝祭的で感動的な雰囲気を醸し出しました。このフライパスは、同社のレガシーとスケール感を象徴するハイライトとなり、集まった航空関係者や観客に強烈な印象を与えました。

最新鋭ナローボディ機A321LRを公開展示

■夜のドローンショーでのA321LR

フライパスで伝統とスケールをアピールした一方で、エティハド航空は未来のネットワーク戦略を担う重要な機材も展示しました。それが、エアバスA321LR(ロングレンジ)型機の地上展示です。

A321LRは、ナローボディ機でありながら、その名の通り長距離の飛行能力を備えています。燃費効率に優れ、ワイドボディが就航していた路線や、これまで採算が取れなかった中距離路線への投入を可能にする機材として注目されています。

A321LR機内

A380のような大型機でアブダビ空港に大量の旅客を運び込む一方、A321LRを用いて、より多くの地域都市や中規模市場へピンポイントにアクセスする戦略を強化しています。

展示されたA321LRは、同社の最新の客室プロダクトが導入されており、訪問者に快適性と機能性をアピールしました。特に、ナローボディ機としては異例の長距離飛行を前提としているため、ビジネスクラスでフルフラットになる座席、機内エンターテインメントシステム、そして効率的な収納スペースの確保といった点に、航空会社としてのホスピタリティと技術へのこだわりが感じられました。

環境への配慮と収益性の向上

■機体の前の客室乗務員

この展示は、エティハド航空が環境への配慮と収益性の向上という、現代の航空業界が抱える二大テーマにいかに取り組んでいるかを具体的に示すものでもあります。燃費効率の良いA321LRの導入は、持続可能な成長を目指す同社のコミットメントを明確に打ち出しています。

洗練されたシャレーと制服が彩るブランドイメージ

■お洒落なシャレー

エティハド航空のプロモーションは、単なる機材の性能展示に留まりません。ドバイ・エアショーの会場では、地上展示されたA321LRの傍らに、写真で示されたような洗練されたデザインのシャレーが登場しました。

上質な空間のシャレー

■A321LRの後方からみた機体

このシャレーは、高級ブティックや美術館を思わせるモダンでラグジュアリーな空間となっており、ゴールドのアクセントと暖色系の照明を効果的に用いることで、エティハド航空が提供する上質な顧客体験を視覚的に表現していました。ブース内部には、アブダビ国際空港の滑走路を模した演出が施され、未来的な客室のデモ展示が行われるなど、訪問者に没入感を提供しました。

イタリアのデザイナーによる制服

■客室乗務員の制服に注目

さらに、機内を彩ったエットーレ・ビロッタがデザインした客室乗務員の制服も、エティハド航空のお洒落でハイセンスなブランドイメージを際立たせる重要な要素です。

同社の制服は、伝統的な中東の要素を取り入れつつ、シックな色合いと洗練されたカッティングが特徴であり、航空業界の中でも特にファッション性の高さで知られています。優雅な立ち振る舞いのクルーがいることで、エティハド航空が提供するフライトが、単なる移動手段ではなく、文化とデザインが融合した特別な体験であることを強く印象づけました。

効果的なPRを行うエティハド航空

■ビジネスクラスシートが1-1で並ぶ

このように、機材の技術的な優秀さと、デザイン、ホスピタリティ、そしてファッションが一体となった総合的なプレゼンテーションを通じて、エティハド航空は中東の主要な航空会社として、一歩抜きん出たお洒落で質の高いブランドであることを効果的にPRしたのです。

レガシーとイノベーションの融合

■A321LRエコノミークラスシート

ドバイ・エアショーでのエティハド航空のPR活動は、過去の栄光と未来への挑戦という二つのメッセージを巧みに融合させたものでした。

ドバイをショーケースに

■A321LRの尾翼

中東の航空ハブ競争が激化する中で、エティハド航空は、拠点であるアブダビのポテンシャルを最大限に活かしつつ、革新的な最新機材とサービスによって差別化を図るという明確な戦略を持っています。

今回のドバイ・エアショーは、エティハド航空が、伝統的な「おもてなし」の精神を大切にしながらも、最新技術とデザインを駆使して未来の空の旅をデザインしていくという、力強い意思表示の場となったのです。

取材協力:エティハド航空
https://www.etihad.com/ja-jp/
 

取材・写真・文:北島幸司

Koji Kitajima(きたじま こうじ)


エアラインで30年以上勤務経験を活かし、航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材した内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを
「Avian Wing」商用サイトにて発信中。航空ジャーナリスト協会に所属しています。
 

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