Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


ANAはGWに羽田空港にて「夜の飛行機撮影会 in SPOT」を開催へ

2024/05/01 航空機・空港・航空会社

ANAグループでは商品企画に社内提案の「がっつり広場」制度を設けており、社員の発案でツアーを造ることができます。多くの部署で、お客様に喜んで頂くことを念頭に企画され、商品化になったものが実際に販売されます。

今回の飛行機撮影ツアーは、整備士が中心となった企画で実現したもので、「夜の飛行機撮影会 in SPOT」と名付けられました。羽田空港制限エリアでの開催は初めてのことであり、2回開催の1回目は3月に夜の格納庫撮影会として実施され、今回の夜のSPOTでの撮影会は2回目として2024年4月27日に行われました。

撮影機材は当日発表

撮影機材は、当日までシークレットでした。ツアーを申し込んだ参加者はそれぞれ好みの機体が撮影できるかどうかワクワク感を持って27名が集まりました。新整備場のANAコンポーネントセンターに17:40に集合し、オリエンテーションに続き、格納庫3階から地上階に降りて、スポットに駐機する機材を撮影する時間が用意されました。

オリエンテーションの充実

ANAコンポーネントセンター3階講堂で行われたオリエンテーションでは、企画者の思いが語られました。企画者の元ドック整備士白石さんと元ライン整備士中野さんによると、「仕事をしていると、夜の航空機の見え方が、昼とはまた違った美しさがあることを感じていました。この気持ちを皆様に感じて頂きたくて、企画を上げました」とのこと。

また、実際に見学した時に知っておくと理解が進むという考えから、事前に機体の特徴が語られました。用意された機材はボーイング787‐9の国際線機材JA836Aと発表があります。

そして、787の特徴が語られていきます。787のコックピット窓で作動するワイパーは従来機とは違う位置で固定されておる、従来機は窓の下で横を向いているものが、787では窓中央部で縦位置に固定されているそう。これは空気抵抗を最小限にして、騒音を低減するためと説明がありました。

他にも、ボーイング767、777ではコックピットドアが開くようになっていましたが、787では固定です。その代わりに、副操縦士天井側に、脱出用のドアが装備されることも教えてくれました。

他にもいくつかの説明があり、その後の見学において実際に目で見て確かめることが出来る工夫のされていることわかりました。

2班にわかれて見学がスタート

講堂は格納庫の3階になります。事務所エリアから格納庫につながる扉を出たところでエアバスA321の姿が見えました。飛行機を仰ぎ見る位置は、ターミナルビルの展望デッキと似た場所なのですが、格納庫内の機体は新鮮に見えます。多くの足場の中の飛行機は、改めて空に飛びたつ準備をしています。人間で言えば健康診断をしているようなものですから、大人しく格納庫に鎮座する姿に親近感が沸いてきます。

格納庫は、航空機が出入りする開口部がA滑走路と平行に広がることから、34L方向からの機体が数分おきに着陸直前の低空を飛んでいく姿を見ることができ、その姿も見学機と同様に気になります。

A321の隣では、撮影機とは別のボーイング787が格納庫内で整備されています。

見学の舞台が演出された

地上階に降りて見学スタートです。途中、多くの航空部品が置かれる中でスペアタイヤが並び、ゴムの匂いで改めて格納庫の中だと気付かせてくれます。駐機場に出る時に、一つの演出が用意されていました。

開口部の前で、一旦待機することになりました。ここで、シャッターが上に巻き上げられて行くのと同時に787の姿がゆっくりと現れていきます。音楽こそ無いものの、ツアー見学の舞台の幕が上がり、参加者はそれぞれに気落ちが高揚したのではないでしょうか。

機体のそばに走り寄って行きたい衝動を抑えた参加者は、綺麗に隊列を組んで班ごとに引率する整備士の指示に従って機首部分から、機体の周囲を反時計回りに進んでじっくり見学、撮影が出来ました。

ボランティアの説明で時間が過ぎていく

企画者の他にも、参加者と同数以上とも思える人数のボランティアスタッフが駆けつけており、見学者の質問に答えていました。オリエンテーションで聞いてきたばかりの飛行機のウンチクを実際に目の前にした機体で確かめることもでき、参加者の理解は深く記憶に残った事でしょう。

夜のスポットでの撮影は、照明に浮かび上がる機体がはっきりと見える効果があり、昼とは違った顔を見ることができます。機体のアップだけでなく、滑走路対岸に広がる川崎の工場夜景も美しく輝き、背景に華を添えてくれると同時に、格納庫を振り返ると、大きな開口部の奥に佇む2機の機体が、暖色の照明の下で輝いて見え、格好の被写体になっていました。

中井整備士が話をしてくれました

■整備士の中井さん

機体をじっと見ていると、整備士の中井さんが声を掛けてくれました。彼の職場のドック整備とは、長い時間を掛けて整備する仕事だと言います。色々なものを外して飛べない状態から、規定基準に従ってまた戻して飛べるようにするとのこと。次期導入のボーイング777Xが早く来てくれることを期待しています。と話してくれました。

整備士目線での航空機搭乗時はどんなところを見ているか尋ねると、「主翼後方に座って、エルロン(飛行機の主翼の端についている補助翼)の動きを見るのが好みです」を明かしてくれた。

運航管理者の築島さんは、GWの繁忙期でありながらこの日のためにボーイング787‐9をラインから外して用意しましたと語り、次回にも乞うご期待だと話してくれました。

記念品を受領して参加者は帰路へ

参加者は、普段見ることのできない目線で飛行機に近付いて仰ぎ見ることのできる感覚が新鮮なようで、感激の声があちらこちらから聞こえてきました。

約1時間の撮影タイムが設けられ、機外を1周しながらじっくりと撮影することが出来ました。機体の下に入らなければ近付くことも可能です。最後に、デブリーフィングが行われ、この日の為に用意された記念品を手に、参加者は充実のイベントの感激を胸に、20:30頃帰路につきました。

その後、メディア向けに参加者3名とANAの企画者2名の囲み取材の場が設けられました。

参加者を代表して

■左から高橋さん、西薗さん、渡邉さん

高橋浩さんは、普段入ることのできない制限区域での開催と聞いてレアな体験を期待して松山から駆けつけました。着陸機を近くで見ることが出来たのも良かったですし、川崎の工場群の夜景が綺麗だったですと答えてくれました。

千葉から参加の西薗久幸さんは、制限区域から地上目線で飛行機を見ることが出来て良かったです。振り返って見える格納庫の風景に萌えたと言います。愛知からの渡邉貴央さんは、787のスタイリッシュな機体を360度まわって見ることが出来た貴重な体験だったと話してくれました。

ANA企画者へのインタビュー

■ANAの白石さん(左)、中野さん

企画者の白石さんは、お客さんと話をしていて、プロも驚く知識を持っている方がいて、驚いたと言います。もう一名の中野さんは、お客様との会話が楽しかったと感じています。企画を実現するのは社内外も含めて大変でしたが、安全性を第一に許可が取れるようにお客様の目線に立つことを考えました。と説明しました。コロナ禍で新規事業に取り組んだことが役立ちましたとのこと。

次回への思いを胸に帰路へ

普段飛行機に触れる機会の多いファンや、筆者にとっても改めてここまでの近さで飛行機を見ることが出来て新鮮な企画だったと思いました。着陸機が見え、格納庫の中の他機も視界に入り、工場群の夜景と共に美しさに磨きがかかっていました。

これからもANAファンを増やしたいので、色々企画していきますとの声を聴き、今回のツアーは終了となりました。

取材・文:北島幸司 撮影:塚原 徹
取材協力:ANA

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