Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


ジャンボ!ジャンボ!!ジャンボ!!!

2023/01/31 航空機

写真:JAL 747-300 JA8178 成田空港

ボーイング747の最終号機がエバレット工場にて1月31日に引き渡され、いよいよ生産が終了します。これからは、ジャンボは増えることは無く、退役する機体を数えるだけという寂しい状態になります。1968年に製造が始まり、1969年2月9日に初飛行を行っていますので、空に浮かんで54年。ありがとうジャンボジェットという心境です。

747最後の機材は!

写真:ANA 747SR JA8133 伊丹空港

55年間で1574機が製造され、最後の機体のボーイング747-8Fはアトラスエアへ引き渡されるN863GTとなりました。この様子は、動画配信サイト「VIMEO」で生配信され、記録は残されるようです。

筆者の747

写真:JAL 747SR JA8121 伊丹空港

ここからは、筆者の747にまつわる話を進めていきたいと思います。この部分の執筆には私の生涯の飛行時間を記録するエクセルで作成したフライトレコードを見返しました。
ジャンボの初飛行は生家のある大阪から東京へJALの747SRでJA8121に乗っています。1977年8月のことで、18歳の時でした。

ANA 747初便

写真:ANA 747SR 就航初便を迎えた羽田空港

そして3回目となるジャンボ搭乗はANAが導入した747SR就航日の1979年1月25日になります。有難いことにスカイメイト運賃で飛ぶことができました。予約は出来ないものの、当日空席があれば普通運賃の半額で乗ることができたのです。記憶では、半額でほぼ1万円を切るほどだったと思います。当時はまだ就航初便を目指して搭乗される方々はさほど多くなかった印象です。このフライトはNH51便で7:33に羽田を離陸して何と3時間近くもフライトしました。

というのも千歳空港上空の天候不良により、着陸に備えたものの降りることができずに羽田空港に戻ってきたのです。他のほとんどの搭乗者は別の便で千歳に向けて再出発しましたが、もともとすぐに折り返す予定だった私は、羽田空港でスカイメイト運賃を払い戻し、無償で初フライトを楽しんだのでした。

初の海外747はタイ国際航空

写真:タイ国際航空 747-200 HS-TGC 成田空港

初の海外渡航はタイ国際航空の747-200B HS-TGBに搭乗し、当時就航していた成田からシアトル経由でロサンゼルスへ向かいました。これは大学在学中の夏休みとなる1980年7月のことです。今は無き、日本発着タイ国際航空のアメリカ便でした。当時、最初で最後になるかも知れないと本気で思っていた海外渡航でしたので、格安運賃を勝手に怪しいものだと思い込み、普通運賃に準じるフレックスタイプの運賃を購入していました。色の違うエコノミークラスシートの名前だけのビジネスクラスに乗っています。

L1ドアのすぐ横にあるエリアで、明るいオレンジ色の3席シートがテーブルを挟んで向かい合わせになっていたことを覚えています。自分の座った座席の写真が残されていないことが悔やまれます。

当時のアメリカ便は、今では考えられないほどジャンボが多く就航していました。予約で望めば乗れる飛行機でした。帰国時は別のエアラインの乗ろうと、ロサンゼルスから経由地のホノルルへはユナイテッド航空の747-100(N154UA)、そしてホノルルからの帰国時にはJALの747-100(JA8128)を利用しました。

貨物便はどうですか

写真:NCA 747-200F 初号機JA8167 成田空港

筆者が一時在籍した日本貨物航空(NCA)では、社員の出張でアッパーデッキに搭乗しましたし、休暇での私用利用も認められていました。当時の機材747-200Fでは8席のビジネスクラス程度のシートとともにその後方に2つのバンク(寝床)が用意されていたのです。バンクは主にはコックピットクルーの休憩、就寝用です。貨物便なので夜間便が多いのですが、NCAの747には片側10個の窓があったので、外を眺めて行けたものです。

ANAラストフライト

写真:ANA 747-400 JA8961 ラストフライト 羽田空港

初便のフライト経験者としてはラストフライトへの搭乗でジャンボ愛を貫きたいもの。2014年3月31日に沖縄那覇空港に向かいました。NH126便への搭乗においてANAでジャンボを完結することができました。

那覇空港はターミナルビルのあちらこちらに胡蝶蘭を飾られていることは知られています。ボーディングブリッジで、鉢とジャンボが同時に見えた搭乗時は綺麗だなと思いました。

満席のフライトではあまり着席していた記憶はありません。仲間とともに機内をウロウロ、飛行中に外を見ていますと、更なる上空にタイ国際航空のエアバスA380を発見。成田空港行きの便と少しの間雁行飛行をしたのでした。タイはANAのフライトを見守っているようで、勝手に祝賀記念飛行だと思うのは自由ですよね。

ジャンボに乗ろう

写真:JAL 747-300 伊丹空港 

製造中止ではありますが、まだまだ世界の空に747は飛んでいます。この先、何度搭乗できるかわかりませんが、可能な限り747を選んで乗ってみたいものです。旅客型でのエアラインへの最終号機は2017年7月に大韓航空に引き渡されたHL7644になります。隣国にある機体ですので、比較的挑戦しやすい環境です。

ジャンボは国宝だ!

写真:JAL 747-100B JA8164 伊丹空港

個人的には東京国立博物館(トーハク)で公開公募していた「150年後の国宝展」に「旅客機ボーイング747」を応募できて良かったと思います。「米国製の機体が国宝になるのか」という疑問ももっともですが、気持ちの上では国産部品が使われていることから無理のない選定だと思います。それが証拠に、選考委員の山中俊治氏(東京大学教授・デザインエンジニア)の評に「個人的には一番美しいプロダクトだと思う」とのコメントを貰い、意を強くした次第です。上野の杜、トーハク内表慶館での公開は1月29日で閉幕しましたが、同時期にシアトルでの最後の747引き渡し式の挙行と時期が重なり、気持ちが747に向かって盛り上がれたのは良かったと思います。

それでは「150年後の空で747に会いましょう」

747よいつまでも

写真:ANA 747SR JA8135 伊丹空港

※機材の表記は「747」と「ジャンボ」をわざと混在させています。

Koji Kitajima(きたじま こうじ)


日系、外資エアライン計4社で30年以上勤務し、旅客、貨物業務を空港と営業のフィールドでオールマイティに経験しました。航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材し、その内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを「空旅のススメ」ブログにて発信中。
航空ジャーナリスト協会に所属しています。

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