Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


錦秋のカナダ!モントリオールとケベックシティで飛行機に浸る

2022/11/21 航空機・空港

■モントリオールの二つの空港
成田国際空港からエア・カナダの直行便でモントリオールに向かいました。カナダメープル街道と呼ばれる紅葉の名所を巡る旅です。拠点としたモントリオールは2つの空港があり、貨物用にミラベル国際空港(YMX)と、旅客用にはモントリオール・ピエール・エリオット・トルドー国際空港(YUL)が使われています。両空港はエアポート・ド・モントリオール(ADM)によって運営されており、YULは1941年にドルバル国際空港の名前で開港しました。2004年に元首相の名前を冠し、今に至ります。

エア・カナダ機が到着する空港ターミナルビル内は、目に付くところ至るところにYULの文字が掲げられています。空港コードがYから始まる難解なカナダの空港であり、親しみやすくする為に多くの人の目に触れるようにしているのではないでしょうか。カナダ第二の規模の都市の空港らしく、多くの人で賑わっていました。

空港内はYULがいっぱい

■モントリオール空港公式スポッティングポイント
北米の空港では、日本で馴染みのあるターミナルビルの展望デッキの存在は多くありません。代わりにYULでは2012年5月に空港公式スポッティングポイントとしてADMがジャック・ド・レセップス公園を開園させました。

ジャック・ド・レセップスはフランスの飛行家で、1910年にブレリオⅪ号機で初めてモントリオール市街上空を飛行した人物です。フランスの植民地だったケベック州を代表する空港らしいネーミングです。

筆者は今回のカナダ渡航に際し、レンタカーを借りていたので空港から5分で到着しましたが、車が無くても空港発の路線バス460Eに乗車し、停留所3箇所目で降車して徒歩で目的地に到着することもできます。

空港公園です

3本ある滑走路のうち3000mの24L、06Rに面しており、とりわけ24Lからの離陸ではターミナルビルから滑走路に向かう機体の地上滑走シーンを眺めたあとに、滑走距離によってエア・カナダのロゴの掲げられた整備工場や管制塔も入る位置になり、素晴らしい撮影環境の中で過ごすことができます。

整備された芝の広場の中央部にはベンチが設けられ、滑走路脇には撮影用に柵の高さをクリアするひな壇が設置されると同時に小高い丘があり、見晴らしはとてもいいです。飲食販売などはありませんが、簡易トイレの設置は確認できました。空港で食料を調達すれば長時間のスポッティングでも快適に過ごせることがわかりました。次から次へと飛来する機体に時間を忘れて楽しむことができるでしょう。

モントリオール国際空港の遠望

■ケベックシティへ
モントリオールから北東方向へ車で3時間走ると、ケベック州の州都ケベックシティがあります。北米唯一の城塞都市であり、街全体がオールドケベック歴史地区として世界遺産登録されています。この観光都市の玄関がジャン・ルサージ国際空港(YQB)です。1993年から元首相の名前を名乗っています。この空港は、モントリオールから300㎞に満たない距離ながら、エア・カナダなど毎日10往復程のフライトがあります。最長距離は、フランス領の面影残るパリのシャルルドゴール空港路線です。空港へ向かうと、2018年に過去10年間にわたる拡張工事を済ませたターミナルビルが新しい様子で旅客を迎えていました。

ジャンルサージ国際空港ターミナルビル

ここにも展望デッキは無く、代わりに高い建物を捜して立体駐車場へ向かいました。最上階となる5階は1750mの滑走路に面しており、もう一本の2700m滑走路には距離はあるものの滑走路24を離陸する機体を見ることができました。

訪問当日は、アントノフAn-124を見ることができました。このように立体駐車場からの撮影が可能な空港も存在しますが、海外では時として警察官やガードマンの警戒区域となっており、注意されたらすぐに撮影を中断するなどの臨機応変な対応が必要となります。

アントノフAn-124の離陸

■飛行機レストランLe737へ
ケベックシティには、航空ファンを喜ばせる施設がありました。ケベックシティ空港の敷地内と言えるような近くに、パイロット出身者が経営する「Le737」というエンターテインメントレストランがあります。

Le737へ行く

市外から空港を目指すとエアロポール道路を通ります。空港外周道路に向かう角に胴体をキャンバスにしたようなデザインの航空機が出現します。造り物ではないホンモノの機体です。置かれた場所を捜すと、空港に向かう道路に入り一度左折するだけでその航空機の置かれた遊園地のような場所に到達します。

敷地内には4つのレストランとステージがあり、夏季にはコンサートなども行われています。外のレストランは間近の飛行機を見上げて飲食、イベントを楽しむことができます。5つ目のレストランはボーイング737機内で展開され、2~6席のテーブル64席を設けており、機内で空の旅の雰囲気を味わうことができます。

航空機は機体番号N320DLで、1984年にデルタ航空に登録されたボーイング737-232/Advです。エンジンは外されているこの機体はカーゴ機に改造され、2006年にはノーザンエアカーゴ(NAC)所属になったクラッシック機です。機内に入ると、コックピットではインストラクターのJad el Bakkar氏が笑顔でこの施設について説明してくれました。2021年夏にケベックシティとモントリオール空港に拠点を置くチャーター会社のChrono Aviationの社長以下有志が立ち上げたと教えてくれました。

社長名の書かれた機首

■シミュレーター体験
コックピットはVRを使ったシミュレーターに改造され、実機とPCを組み合わせたトレーニングの場を提供しているとのことで、ケベックシティ空港での離着陸を体験させてくれました。VRで写される機体はBoeing737-800になっていました。実機は、副操縦士席側に操作用のPC画面がある以外はまさに737クラシック機のコックピットそのものです。15分CAD29.99(3,300円)~1時間CAD79.99(8,700円)程度の金額で楽しむことができます。

シミュレーターを紹介するJad el Bakkar氏

客室では前方のファーストクラスの位置にオーダーカウンターがあり、周囲には機内サービス用カートが何台も置かれていました。テーブルに黒いクロスが掛かかり、壁には内側に向いたディスプレー画面が設置されています。

壁の窓と窓のあいだに1909年から1984年にかけての航空の歴史が写真とともに解説されています。1909年にアレキサンダー・グラハム・ベルが複葉機グライダーで1㎞の距離を飛んだのが飛行事始めと紹介されていました。また、1984年にはコンコルド、NASAスペースシャトル運搬用ボーイング747ジャンボジェット、アントノフAN225、ロッキードC5Aギャラクシーが当時の代表機として紹介されていました。

機内の様子

■地元料理を堪能
利用にはそれぞれ食事のオーダーが必要とのことでメニューを見ると、コックピットカクテルや737ビールなどのオリジナルメニューもオーダーできるようになっていました。地元料理のプーティンを頼んでみると、料理は機内サービス用のフルサイズカートで運ばれてきました。容器一杯のフライドポテトの上にチーズとグレイビーソースがかかっていまする。地元料理を堪能しつつ、クラシックボーイング737の機内に滞在できる喜びでいっぱいでした。

食事は機内カートで運ばれます

現在、このLe737は冬季休業に入っています。ホームページには来年の夏にお会いしましょう。と書かれていました。

取材協力:デスティネーションケベック ⇒ https://www.quebec-cite.com/en
取材協力:エア・カナダ ⇒ https://www.aircanada.com/jp/ja/aco/home.html

Koji Kitajima(きたじま こうじ)


日系、外資エアライン計4社で30年以上勤務し、旅客、貨物業務を空港と営業のフィールドでオールマイティに経験しました。航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材し、その内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを「空旅のススメ」ブログにて発信中。
航空ジャーナリスト協会に所属しています。



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