Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


世界最大の軍事エアショーThe Royal International Air Tattoo 2022に行ってみた

2022/08/09 航空機

欧州エアショーFarnborough International Airshow(FIA)への取材にロンドンへ行くことになりました。情報収集でサイトを見ていますと、FIAの開催直前にThe Royal International Air Tatoo(RIAT)が行われていることを知りました。

世界一の軍用機エショーと言うだけあり、多くの軍用機の地上展示や飛行展示は興味が沸きます。せっかく渡航しますのでFIAが始まる前の日曜日、7月17日に訪問を決めました。チケットは、シャトルバス込みで64ポンド(約1万円)となります。

RIATの歴史は1971年に始まっており、英国空軍慈善信託企業(RAFCTE)によって運営されていることがわかりました。スポンサー企業にはBoeingやAirbusも名を連ねており、FIAも一緒に見る人が多そうです。最大のスポンサーは世界最大規模の防衛企業である地元英国のBAEシステムズです。

開催場所はイギリス空軍(Royal Air Force)Fairford空軍基地で、ロンドン市街からは西方に120㎞に位置します。車では1時間半かかり、鉄道ですとロンドンパディントン駅からGreat Western Railwayで1時間かかるSwindon駅でシャトルバスに乗り換えて更に30分の位置になります。

朝6時45分から運行開始するシャトルバスで会場へ。7月になると、昨今のロンドンは猛暑日が続きます。爽やかな風は吹くものの、結構日焼けしそうです。

会場は広大であり、4つのゾーンに色分けされています。外側には飛行展示する機体の待機場所が用意されており、ここから撮影するのも動きが感じられていいですね。会場内には11か所をまわるフリーシャトルバスが用意されています。

基地内に観覧車!

地上展示を含めて見てまわりますが、目印は会場中央部にあるFairford Eyeと呼ばれる観覧車です。空軍基地内の施設としては意外な設備ですが、これがRIATのアイコンになるのは間違いありません。地上展示機と一緒に写っていれば、それはすぐにRIATとわかります。

バトルオブブリテン メモリアル フライト

フライトスケジュールを確認しますと、朝8時から午後6時まで58の機体(チーム)の飛行が予定されています。それこそ休む間なく次々と飛ぶという状態にスケールの大きさを感じます。

印象に残る飛行展示は、第二次世界大戦時に運用開始したアブロランカスターの重厚な飛びと華を添えるスピットファイヤーの編隊飛行です。バトルオブブリテン メモリアルフライトとしてイベントなどで記念飛行に人気が集まるようです。

韓国空軍の「Black Eagle」が飛びます

韓国空軍の「Black Eagle」のKAI T-50B Golden Eagle 9機によるアクロバット飛行やイタリアの第313飛行部隊フレッチェトリコローリのAermacchi MB-339PANによるアクロバットも迫力があります。地元RAFは真っ赤なBAE Systems Hawk T1で「Red Arrows」によるフライトを行います。海外のアクロバットチームの飛行は、スモークの色が多色であり、派手さで心を捉えます。

メディア用の撮影場所は、会場内のアナウンスを発信する場所でもあり、Black Eagleのナレーターが解説する様子を近くで見ることができました。韓国ドラマに出てもいいくらいのなかなかスマートな二人組でした。

スイス空軍のピラタスPC-7チームとF18ホーネット

ベルギー空軍のF16 The X Tigerは尾翼に黄色いXマークを付けて飛ぶ異色の塗装でした。

スイス空軍のピラタスPC-7チームと同軍F18ホーネットディスプレイチームの混成飛行は見事な飛びっぷりでした。



RAFのユーロファイタータイフーン

地元イギリス空軍(RAF)のユーロファイタータイフーンはデルタ翼いっぱいにイギリス国旗のユニオンジャックを描き、迫力満点。

テックゾーンのひとこま

RIATはマニア向けだけの軍用機の展示会ではありません。イギリス空軍が協力するだけあって、将来の軍人育成に一役買おうと、Techno Zoneという建物で教育の場を設けています。

会場を歩くとわかるのですが、子供連れの家族が多いことに気付きます。ロッキードマーチン社がスポンサーとなり、子供達に科学を通して空や宇宙に親しんでもらおうと、25以上のブースを設けていました。

紙飛行機製作までできる

ここで子供たちは、紙飛行機の製作と飛行、航空機模型による緊急脱出の体験、VR体験、エンジン模型組み立て体験などを通じて空や宇宙を学びます。

RAFのショップが開店!

外に出ると、多くの屋台が軒を連ねます。RAFのショップがあるのは当たり前として、モデルショップやプラモデルショップ、本屋などまであります。

民間機ベースの軍用機 E4Bも!

スポンサーとして名を連ねるブライトリングは仮設とはいえ立派な店舗で腕時計を販売します。

純粋な民間機はありませんが、軍用で活躍する旅客機の展示はありました。アメリカ空軍E4B(31676)、ドイツ空軍のA340-300ベースの16+02、カナダ軍A310-304ベースのCC-150(15003)に加えOil Spill Responseのボーイング727-2F2SF(G-OSRA)も姿を見せていました。

パッチ販売なども

727はサザンプトンを拠点とするOil Spill Response Limited所属の機体で、世界中の油田流出の現場に派遣される機体には内部のタンクに油液拡散防止の薬剤が搭載されています。

カナダ軍のCC-150は要人輸送に使われており、機内では機体前方のVIP客席も公開されていました。今のビジネスクラスには及ばないプレミアムエコノミークラスのシートでした。

多くの展示では、普段見ることのできないシーンも多く遭遇し、単なる見世物ではない、教育の場であるということも社会的意義を感じる大きな航空ショーでした。

来年の開催は2023年7月14日(金)~16日(日)の3日間。今なら早期割引で曜日によっては34ポンド(約5,500円)から入場券が用意されています。

行く価値のある大イベントです。

取材協力:Royal International Air Tattoo ⇒ https://www.airtattoo.com/

Koji Kitajima(きたじま こうじ)


日系、外資エアライン計4社で30年以上勤務し、旅客、貨物業務を空港と営業のフィールドでオールマイティに経験しました。航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材し、その内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを「空旅のススメ」ブログにて発信中。
航空ジャーナリスト協会に所属しています。

 << 前のページに戻る