Aviation Journalist

航空ジャーナリスト 北島幸司


世界のエアライナーファンがシカゴに集う  Airliners International2022開催!

2022/07/23 航空機・航空会社

エアラインコンベンションを紹介したい



エアラインファンが世界中からアメリカに集まるというイベントが毎年全米各地で開催都市を変えて行われます。

【画像:ヒルトン・ローズモント・シカゴ・オヘア客室からの眺望】

会場のヒルトン・ローズモント・シカゴ・オヘア バンケットルーム

2022年6月23日(木)から25日(土)の3日間、シカゴオヘア空港近くのヒルトン・ローズモント・シカゴ・オヘアを会場として盛大に開かれたAirliners Internationalは45回目を迎えました。ホテルの大宴会場となるグランドボールルームと呼ばれるメイン会場を含め計6つの部屋で1500㎡になる会場が用意されました。今回は特に盛況で200以上のテーブルが集まり、ありとあらゆるエアライングッズが会場を埋め尽くしました。

ブーティーバッグのなかみ

ホテルの眺望がいい



イベント会場となるホテルはツアーのアクセスも考慮され、空港に近い場所が選ばれます。
ヒルトン・ローズモント・シカゴ・オヘアでは、参加者に特別料金を提供するだけでなく、素晴らしい部屋への割り当ても行ってくれます。今回の部屋からは、シカゴダウンタウンからオヘア空港までの着陸コースの全ぼうを見ることのできる高層階を指定してくれていました。

ベンダーと呼ばれるテーブル予約者が来場者にグッズを販売するだけでなく、ディスプレイに凝り、見せることにも力が入ります。時にはトレードと呼ばれる交換会となる社交の場にもなります。航空機モデルショップなどのプロの業者もいますが、多くは素人の参加であり、それこそ何が持ち込まれるか分からないところに楽しさがあります。これこそがネットでは味わえない実世界の交流のある世界です。

どんな商品があるのか



テーブルで取り扱われる品を分類するだけで20以上もあります。主なものをご紹介すると、旅客機モデル、安全のしおり、トランプ、ピンバッジ、ステッカー、カトラリーなどの他に紙物の時刻表、搭乗券、機内誌、絵葉書、写真、ポスターなど。エアラインのロゴさえあれば扱うことができます。それぞれのカテゴリーに専門家がいますし、複数アイテムを扱う人も多くいます。

人気のあるものは戦後の民間航空史に残る時代の商品でしょうか。多くが倒産して現在の大手エアラインに統合される前の会社です。パンアメリカン航空を筆頭に、ブラニフ・インターナショナル、TWA、ウェスタン、ナショナル、オザークなどノスタルジーという言葉だけでは表すことのできない、ゴージャスな空の旅ができていた頃の記念品です。

受付から楽しい



3日間の入場にツアー参加権が付いて60ドル(約7,800円)のチケットを事前購入しており、レジストレーションデスクでチェックインしました。ここで渡されるのはブーティーバッグと呼ばれる袋です。戦利品袋を訳されるだけあり、開催年と場所が入った凝ったデザインの袋にプログラムや特注ピンバッジなどとともに様々な貴重なエアライングッズが入ります。トランプ1枚がコレクションカードのようにクリアケースに入っており、これなども収集アイテムになるものかと感心しました。この袋を毎年集める人もいるという逸品です。

出展者に聞く

航空機のアート



特徴のあるテーブルで話を聞きました。「ジェットエイジ アート」はエアライナーの細密絵画を制作販売しています。小さなものではしおりサイズから、大型ポスターまで、依頼があればどのエアラインでも描くことができます。代表はアーティストのクリス・ヴィドラック氏。イラストレーターのソフトを使いPCでデザインし、仕上げのプリントは外注します。

エアライン時刻表を扱うデビットさん

「ミルトン&キャシーコレクタブルズ」は、1997年から夫婦でエアライナーの尾翼モデルを中心に販売しています。機体デザインの中心は尾翼にあり、その部分だけでも大いに魅力のある商品になることがわかります。他にはウィングマークなどのピンバッジが並べられていました。

「デビット・ケラー」氏は1972年から始めた航空時刻表の収集を1994年から売買するようになりました。1万を超える時刻表をコレクションし、現在では1950年代にフォーカスを当て始めていると言う。

UPS機長のトーマス氏と商品の数々

「シカゴビンテージポスター」では、エアラインが展示会などで宣伝用に使用した大判ポスターを長期間の展示に耐えるように布に貼付加工したものを販売していました。

UPSボーイング767-300F型機機長の「トーマス・リバジー」氏が出展するのは、趣味のプラモデルや、絵葉書などです。販売物が並ぶ中で、UPSの機体のトレーディングカードを無償で配るなど、会社のPRも忘れていません。

主催者組織の会長二名に話を聞きました

ユナイテッド航空OB、OGで組織する、非営利団体も出展していました。「ユナイテッド航空レガシーファウンデーション」の代表バーバラ・ハンソン氏は「過去の余剰販促品を格安で販売し、売上は組織の維持や慈善団体への寄付に使います」と話してくれました。記念撮影をお願いすると気さくに応じてくれ、1968年に使用開始した客室乗務員の制服を着用したOGとともに収まってくれました。

会長に聞いた



2名の会長となるクリス・スリマー氏とウィリアムズ・デマレスト氏に話を聞きました。イベントの運営は親組織となるWAHS(ワールド・エアライナーズ・ヒストリカル・ソサイエティ)の6人の役員の合議制で行われます。

過去の特徴のある開催年を聞くと、プラット・アンド・ホイットニーエンジン工場見学のあった1986年のハートフォード、会場のエキスポセンターに特徴のあった2007年のカンザシシティ、デルタフライトミュージアムの中でできた2015年のアトランタでのものと3つを回想してくれました。

今後、実現したいイベントは、古い機体での遊覧飛行です。コストと安全面でクリアすべき点は多いようですが、過去の事例を再検討しているとのことで期待できます。

【写真:ウィリアムさん(左)とクリスさん】

ツアーではランプエリアに入ります

コンテスト



ホテル内別会場では、モデル、絵葉書、写真と3つのカテゴリーでコンテストが開かれていました。会期中に参加者の投票を行い、上位者を決めます。

スライドショー



航空機のスポッティングは、長い間スライドフィルムでの撮影の時期がありました。これを世界のマニアの間では売買交換していました。その名残があり、イベントにスライドショーの時間が設けられていました。50枚ほどの洗練された画像がスクリーンに投影されるたびに、「これは俺も見たことある」だの「この機体はその後スクラップされた」など皆が発言しながら進行され、懐かしくも楽しい時間となりました。

ツアーのランプ撮影会でのひとこま

期間中に参加者に用意されたツアーは5種類。恒例の空港ランプツアーに加え、夜間メンテナンス、オペレーションタワー訪問はアメリカンとユナイテッド航空ぞれぞれがあり、イベント開催期間中に合計28回も開催されました。参加費はUSドル10~15とバス代程度の良心的な価格設定になっています。

筆者が参加したのはランプツアーとAA,UAのナイトメンテナンス。ランプは空港内制限区域の訓練施設を目指します。各種保安、消防、冬季訓練が行われる中、今回は降雪時の作業を見せてくれました。機体に積もった雪を作業車から噴霧する除氷液で融雪するデアイシングです。フェデックスで活躍したボーイング727-200F型機(N257FE)が訓練機として駐機していました。その後、滑走路脇へ移動します。1時間ほど滑走路10Cへの着陸機を撮影することができました。

アメリカン航空ナイトメンテナンスツアー

ナイトメンテナンスツアーはホテルを22時に出発する、翌朝の出発便の機体整備などを行う格納庫見学となります。AAはボーイング737Max8(N342RX)とボーイング787-9(N832AA)、UAは787-9(N24974)をじっくりと見ることができました。案内役の社員数名が機体内外にいますが、見てはいけない場所はありませんでした。AAの機体脇ではボアスコープを使ってのエンジン検査について機器を交えて説明があり、機内もそれこそコックピット、クルーバンクから後部ギャレーまで見ることができる大満足のツアーでした。

ユナイテッド航空ナイトメンテナンスツアー

朝からナイトツアー終了の深夜まで休む時間なく趣味に浸ることのできる夢のような3日間。来年の開催地はダラスに決まり、会場はハイアットリージェンシーDFWとなりました。気持ちは既にダラスに向かっています。

取材協力:ヒルトンホテル https://hiltonhotels.jp/
     エアライナーズインターナショナル https://airlinersinternational.org/ 

Koji Kitajima(きたじま こうじ)


日系、外資エアライン計4社で30年以上勤務し、旅客、貨物業務を空港と営業のフィールドでオールマイティに経験しました。航空ジャーナリストとして世界の航空の現場を取材し、その内容をわかりやすく伝えます。航空旅行の楽しさを「空旅のススメ」ブログにて発信中。
航空ジャーナリスト協会に所属しています。



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